注意:データは当時のものです。
みえIBD 医療講演会
2018年10月8日 山本隆行先生
今の治療の現場
IBDの治療は劇的な進歩を遂げています。それを可能にしたのは「生物学的製剤」です
より良い薬が出てくる中、いい事ばかりではない
治療をする側としては「どの薬をどのタイミングで使えばいいか」という選択を迫られ
今後、どのように治療を進めていくか悩みを抱えている
難病の中で、IBDの位置付けも変わってきており国の制度も目まぐるしく変わっている
自分にとってどんな治療がいいのか?今後、どのように向き合っていくのか「情報」が
とても大切だと感じています。
今日は、患者の皆さんとフリートーク形式で進めて行きたいと思います。
奥家会長(潰瘍性大腸炎)
山本先生に大腸全摘の手術をしてもらって、今振り返ると
「山本先生からどちらの選択にしますか?」と考える時間を与えてもらった時に
仕事を優先するという選択をし、7年前に大腸を全摘しました
3回の手術を経て、その後は多少のトラブルはあるけれど今はトイレ回数も7~8回で収まっている。これからIBDになる患者さんが真っ先に不安に思うのは「就労」の部分だと思うし、病気による差別という問題もあり「病気とどう向き合っていくか」を今後どう考えていけばいいか
山本先生にお聞きしたい。これから就職を控えているタイミングで発症した患者さんなど
先生
潰瘍性大腸炎に関しては健常な方と比べて「大きなハンディキャップ」はないと思っている
コントロールが比較的に
クローン病の患者さんについては「栄養障害」「お尻の症状」などコントロールが難しく
社会に出るのが中々、難しいと思う場面はあるがレミケードやヒュミラの登場によって
クローン病のQOLも劇的に改善している
今は診察時間も短くなってきており、レミケード・ヒュミラの影響で患者さんの状態も良くなり
以前のような食事治療や栄養指導もなく、7~8割の方はすっと寛解状態へ持っていける
以前はエレンタールという治療があったが、とても継続が困難だった。食事制限は各々続けているが以前のような厳しい食制限はもうない
IBDに関しては、パラダイムシフトが起き今までの通説は通用しなくなった
社会的にも同じ立場で働けるし、健常な方と同じように生活ができる
ただ、7~8割の方はそういう道を辿れるが、第2時無効期になったり、薬物治療での
コントロールが難しい患者さんとの向き合い方をどうするかが重要になってくる
薬物的な治療でコントロールが難しくなった場合、外科的な治療で状態をよくすることもできる
ただ、手術をすることによって合併症のリスクもある。しかし、手術をすることでQOLを改善してきた患者さん
以前は病気と闘うための武器が少なかったが、今は多くの武器がある
これからは、患者さん一人一人の状態に合わせて「不必要に強力な薬」を使わないように
医療を提供する側が意識していかなけれ行けないと感じている
医療費の面でも高額な薬なため、必要のある方にきちんと使っていくべきだと思っている
今までの話からもわかるように、IBDになったからと行って「過剰に心配する」必要はないので
親御さんや周りの方は「病気に対する正しい知識」を身につけ、病気と向き合う事が大切です
長くなりましたが、「そんなに心配する必要はない」ということです。
「IBDで人生が終わった」と感じる必要性はないし、そういう時代はとっくに終わっています
質問
エレンタールを飲んで、血糖値が上がるんですが大丈夫でしょうか?
先生
血糖値に関しては難しい部分があるんですが、暴飲暴食を避けていれば問題ないかと思います
原因が様々なので、生活習慣を見直していくことが大切です
中東先生などの管理栄養士の先生に相談しながら進めて行きましょう
ステロイドを使っている患者さんは血糖値がどうしても上がってしまいます
エレンタール を使っていながら、食事からのカロリーも過剰に摂取していると肝臓に負担がかかるので、そう行った部分は思い当たることがある場合は気をつけましょう
今枝副会長(クローン病)
お酒は飲んでもいいんですか?
先生
お酒は患者さんの趣向で飲んでいいと思いますよ
ちょっと悪くなることを覚悟して、仕事の付き合い程度なら全然大丈夫です
昔は栄養療法でかなり制限が厳しかったが、今は「様々な食事を試してみて自分に会う食事、合わない食事を見極めていく」ことが大切なんだろうと思います。
そういう意味では、健常の方と変わらない基準で捉えていいと思います。
今枝副会長
ゼルヤンツについて、副作用を教えて下さい
先生
ゼルヤンツは炎症のシグナルをブロックするという新しいアプローチの薬です
レミケードやヒュミラが効かない人にとって、僕は非常に期待しています
ヒュミラ・レミケード・イムランなどその他の生物学的製剤を使っていないことが条件です
ゼルヤンツは新薬なので、医師とよく相談した上で使用することをお勧めします
エンタイビオという薬が認可予定で、この薬もレミケード・ヒュミラが効かない人にとって
期待ができます。ゼルヤンツもエンタイビオも感染症が最も怖いことです。自分で感染症予防はしっかりしましょう
難病相談員 吉尾さん
難病相談会では就職の相談が最も多いです。僕の経験からは「自己管理」の部分を話します
僕は山本先生に手術して頂いて、体調も安定していますがガンなどのリスクがあるため
定期的な検診は言っています。2~3ヶ月に1回、原因不明の出血があります。
これは食事によるものでしょうか?
先生
大腸を全摘した方は「痔」は起こりにくくなると理論的では言われているが「痔」からの
出血をする人もいる
一過性の出血であれば、問題ないが大量の出血でない限りは
新規の患者さん
最近、潰瘍性大腸炎になりました
怖くて昔は好きだった食事も避けるようにしている
例えば、コーヒーはカフェイン・ノンカフェインどちらを選んだらいいでしょうか?
先生
僕はそこまで気にしなくてもいいと思いますが
一番大切なのは「自分の病気が落ち着いているかどうか」です
最も確実なのは大腸カメラで粘膜の状態を確認し、綺麗な状態であれば問題ないと思います
炎症がある場合は、制限する必要があるので「よくなるまで我慢」して欲しいと思います
ご自身に自覚症状がなくても大腸カメラをやってみると結構な炎症がある方もいます
定期的な大腸カメラをお勧めします
潰瘍性大腸炎・クローン病(大腸)の方に共通して言えるのは「ガンのリスク」です。
大腸カメラの意味は「活動性のチェック」と「ガンのチェック」です。
できれば年に1回の大腸カメラをお勧めします。どうしても嫌だと言う方は年に2回でもいいです。
これは、病歴が長い人ほど「がんのリスク」は高くなるので例え体調が良くても定期的なカメラはして欲しいと思います。
カプセル内視鏡は「生検」ができないので、僕はお勧めしません。
質問
潰瘍性大腸炎を発症して22年
レミケードをやめる時期っていうのはどうすればいいでしょうか?
先生
正直、レミケードをやめていいかどうかという質問に「きちんとした答えを持っている医師」はいません。今、「はやぶさ試験」という臨床試験をしており、レミケードをずっと使っていて調子のいい人を集め「使い続ける軍」と「使用をやめる軍」に分けて調査をしている
うちの病院でも4人中、2人が調子が悪くなった。
症状が悪くなった人は「大腸カメラの初見」でまだ多少の炎症が残っている人
レミケードをやめても大丈夫だった人は「大腸カメラの初見」が綺麗で、症状が落ち着いている人は切ってもいいんじゃないかなと思います。クローン病に関しては「レミケード を切る」という決断は中々難しいと思います。
質問
患者同士で話していてよく話題に出るのは、抗生物質や風邪薬や痛み止めを出してくれない場合って困るよねという話がある。IBD以外で医者にかかった場合、どうやって説明したらいいか?
先生
できる限り短期間の使用にして欲しいけれど、どうしても辛い時は使ってもいいです
乱用はして欲しくない。開業医はとても嫌がります。
風邪であれば出された分は飲み切ってもいいと思うし、抗生物質を使っては行けないという事もないので医師に伝えてくれたらと思います。
先生
妊娠について心配されている方について、IBDになったからと言って「妊娠に影響」はない
大事なのは、妊娠の前後や妊娠中に「状態が悪くなる」と重症化してしまうので避けた方がいい
過去に7人、妊娠中に手術をしたことがある。
妊娠に臨む場合は、「IBDの病態をコントロールしてから」万全の状態で望んで欲しい
IBDの患者さんに本当にお願いしたいのは「医師と相談しながら妊娠を計画的に」という事です
以前に手術を経験されている方は妊娠・出産が多少難しい場合もある
薬についても、日本は認可が非常に厳しいので安心して欲しい
イムランは妊娠の3ヶ月前に切ったほうがいいという話があるが、最近の研究ではイムランを継続したほうが妊娠・出産を良好にできたという結果も出ている
ステロイドに関しては「流産」の可能性が上がるので、ステロイドを飲まなければいけないような状態で妊娠はしないほうがいいという事です。
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かよたん (日曜日, 20 12月 2020 02:53)
質問です。クローン病確定して、そんなにひどくないとのことで、チオプリンを今日から飲んでるらしいのですが、やはりヒュミラかレミケードのはうがいいのですか?